窯元がある地域は、本当に記憶にとどまるとても美しい景色だった。
九州地方の言葉で、陶磁器がつくられる場所を「皿山」というそうだが、大分県日田市から車で30分ほど山道をのぼり、、、途中、心配になってくるほど山しかない本当に山深くへ入っていく風景をのぼると、突然ひらけてくる小鹿田焼窯の皿山。
車を停めて窯元をまわると、コン、コン、と何やら美しい木の音が。
さらさらと流れる非常に澄んだ川の水のせせらぎ。
よくよく目を凝らすと、川に流れる水の力を活用して、唐臼を動かし、陶土を砕いているのです。
小鹿田焼はその陶土からこうして拵えているのです。
この光景をみて、自分がとてもこの焼き物に心惹かれる理由が、途端に腹落ちしたものです。
何箇所かあるこの唐臼のことを、途中買い物がてら窯元の奥様に伺ったところ、川の水を活用しているという性質上、台風被害の影響が避けられないそう・・・。自然の力ありきのこのような工藝は、単に美しい、だけではなく、時に脅威を見せつけられることも日常の景色なわけで。
◆小鹿田焼の共同窯
かつて、民藝運動の祖と呼ばれる柳宗悦が、小鹿田焼のことを「土がとてもいい」といったそう。
そう、自然にある川の動力を活かして土から作られた小鹿田焼。あのように丁寧につくられた窯元の光景を思い浮かべると、食べられるということや、食事の有り難みも一層強まるものです。
代々継承される人間の手による美しき工藝品、手仕事の世界に触れるたび、とても豊かな気持ちが広がります。
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